体重60kgの人体は、約60兆個の細胞からできています。1kg当たり1兆個の割合です。生まれたばかりの赤ちゃんでも、3kgの場合3兆個の細胞をもっているのです。髪の毛、爪、皮膚、眼球、どれも細胞の集合体でできています。細胞は、その中心に核を持っています。核は核膜でおおわれています。その核の中に、遺伝子があります。遺伝子の構造と原理は、すべての生物に共通しています。地球上に棲息している、200万種以上の生物も同じ遺伝子構造を持っているのです。微生物も植物も動物も、すべて同一の遺伝子構造で成り立っているのです。すべての生命体が、同じ起源をもっていることの証です。グレゴリー・メンデルが「遺伝の法則」を打ち立て親の遺伝子情報が子に伝わるということを立証しました。それから突然変異があるということも併せて追認しました。これに続いてワトソンとクリックがDNAの働きを解明して事情をはっきりさせました。
当時は、細胞の複製は、いっさいDNAが管理していると考えられていました。遺伝子には核酸という物質があります。ここでいう核酸というのは、デオキシリボ核酸、DNAとリボ核酸、RNAの二つのことです。従来の考え方では、DNAは螺旋状の二本のテープになっていて、そのテープの上に4つの化学文字で表される情報が書かれていて、この情報が遺伝情報だといわれていました。そこには、生命に関するすべての情報が入っていると考えられていたのです。人間の細胞一個の核に含まれる遺伝子の基本情報量は30億の化学の文字で書かれており、私達はこのDNAに書き込まれた膨大な情報によって生きていると考えられていたのです。その説がどう変わってきたかというと、まず核酸に、自己触媒機能があるということが判ってきたことに代表されます。これまでの主人公だったDNAに変わって、RNAこそプロデューサーの役割を果たしているのではないかという考え方が台頭してきているのです。生命の進化史の中では、DNAより先にRNAができていたのではないかということになってきたのです。RNAは生命情報のエディターであり、ナビゲーターなのかもしれないのです。
脳に例えると、DNAは左脳です。細胞を複写するための情報の貯蔵庫です。RNAは右脳です。生命の未来のメッセージを描く、創造工房の機能を果たしているのです。まず、右脳がイメージを描き、左脳はそれの正しさを記憶をひもといて検証します。そこで、左右脳は原子核内の陽子と中性子のように互いの役割を交換しながらリズミカルに回転します。そのリズムのカオスの中から、ジャッジするのが間脳です。そうです、あの中間子なのです。DNAとRNAを結ぶのは、私達が神と呼ぶ存在なのかもしれません。RNAが生命の設計図を描き、それを形にしていくのがDNAであり、その二つを絶妙の関係で結ぶのが「神」の役割なのでしょう。
宇宙はビッグバンから150億年で熱死します。フリードリッヒ・ボルツマンはありとあらゆるエントロピーの系は熱死の方向を辿るだろうと考えました。地球が誕生して45億年ですから、あと105億年で地球も、太陽も、月も熱死するのです。地球上でいうとこれは酸化を現します。地球の生命系では、酸化と還元が循環しています。地上に存在するもののすべては、誕生した時点から酸化を始めるというのも「熱力学の法則」の範中の考え方です。地球は、宇宙の中心の熱源から遠く離れすぎていたことによって平衡状態に達しない合間に、熱力学的なCymosをおこして生命系をつくりだしました。生命は、無秩序カオスから、秩序を生んでいるといわれる由縁です。ギリシャの学者ヘシオドスは、これを「最初はアピス(混沌)しかなくそれからガイア(大地)とエロスが生じた。次にガイアは、星の輝くエロスを生んだ」とかいています。無秩序から秩序をつくりだすこと、これが生命活動の特質です。生命の維持に必要なのは開放系であること、高度な非平行性を持つこと、更に、自己触媒性を持つこと、の3つです。自己触媒とはゆらぎの内部強化のことです。閉鎖的で、バランスをとることばかりに頭をめぐらせ、他の人にやらせてコントロールだけしようとしたシステムはすべて滅んでいきます。
この宇宙では、ゆらいでいないものはありません。ゆらぎとは混沌の状態の中の秩序です。リズムだともいえます。一見、混沌として掴みどころがないように見えていても注意深く見つめていると、そこに一定のリズムを発見することがあります。すると、私達の心は落ちつきを取り戻します。旅客機にはじめて乗った人は、初めて体験する揺れに身体をすくめてしまいます。細胞や神経が緊張してしまうのです。今まで体験したことのない状況に置かれると、私達はまず心身を混乱から防ごうとして身構えます。初めは、突然襲う揺れにただ恐怖と戦うはずです。少し機体が降下しても「大丈夫なのか」と考えてしまいます。何回も揺れに出会っているうちに一定のリズムがあることに気づきだします。秩序を見いだすのです。決してでたらめな揺れではない。秩序があり波を描いているということを探り出す力がはたらくのです。これが、Cymosを見いだそうとする人間の探索力という神経回路の力です。私達は、生命にはゆらぎがあり、それが一見気まぐれで発作的な予測不可能なゆらぎだと感じている間は、恐れおののくしかありません。そのゆらぎが、自分達とは遠い存在だと思わざるを得ないのです。しかし、そこに一定のリズムや秩序を見いだすことのできるCymos発想が自分達の体内の細胞の中に存在するのだということを悟った時、心身ははじめて開放されるのです。四六時中、神経を張りつめていることはないのです。リラックスして自分達の全身を構成している60兆個の細胞の能力を心から信じることができた時、私達は、混沌から光のような明快な答えを見いだすことができるのです。
1.サイモス理論 | 2.魂 空 | 3.生命 細胞 | 4.意識 背骨 | 5.心 ゆらぎ
6.秩序 自己組織化 | 7.情報 潜在能力の育成 | 8.編集 同質の結晶 | 9.創造 臨界点の生命力
10.花 宇宙の花 | 11.水 波紋 | 12.大気 奇跡のバランス | 13.光 光の膜 | 14.根茎 根茎の結び
15.房 極小の房 | 16.群 吸引力 | 17.波 地球の呼吸 | TOP